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2023/09/19

  • コラム

「衣食住」「住衣食」

 言い古された言葉のようですが、「衣食住」という言葉。言いなれた言葉であるので当たり前のように口に出していますが、いったいいつごろから言われたのか、なぜこの順番なのかなど、あたらめて疑問に思うと分かりませんです。

 そこで「衣食住 いつから」とか「衣食住 順番」でググってみますと、これらの問いかけに応えているたくさんのサイトがありました。使われだしたのは「1882年」だそうです。順番については実に様々な論があってなかなか理解はできませんです。建築に携わるものとしては「住・衣・食」でも良いのにと思ったりもします。

 などと思っていると上記の書籍が出版されていることを知りました。光嶋裕介著『ここちよさの建築』(NHK出版 2023年)です。本書は「『衣食住』という言葉があります。」という一文から書き始められていて、「住」について、「着ることや食べることと同じように、自分なりの価値観や、それを語る多種多様な言葉をもっているでしょうか」と問いかけられて、住まいを語る上でのキーワードとして「ここちよさ」を挙げられています。100ページ余りの書籍で平易な言葉で書かれているので読みやすいと思いますので、住み替えや新築をお考えの方はご一読ください。(宣伝しているわけではありません。)

 「衣」も「食」も新しいものに触れたり自分に取り入れたりする機会が多い(というかほぼ日常的)ので、自分に合う合わないはよく分かっている(無意識であっても)と思います。口に合わないとか似合わないとか。「住」も同じように選択されるのだと思います。住まいもご自身で合う合わないを感じ取られて選択されていると思います。

 『ここちよさの建築』の中に、紀元前一世紀に活動したローマの建築家ウィトルウィウが著した『建築書』からの引用で、「建築には『用(よう)・強(きょう)・美(び)』という三つの根本的な側面がある」と記されています。「用」は用途、「強」は強度、「美」はそのまま美しさを表しています。 これらと建築の図面を掛け合わせて、用途は平面図で、強度は断面図で、美は立面図で、それぞれ表すことができると本書(36ページ)では述べられています。

 建築の打ち合わせは図面を介して行いますが、住まいは空間ですので図面だけでは「合う合わない」が感じにくいかもしれません。バーチャル空間というのもありますが、実際のモデルハウスや住器類とご自身との関係性のようなものは実際の空間の中でないと感じにくいものだと思います。良いものを作っていくうえで「違和感」を解消していくのは大切なことですので。

 上記の書籍の著者は住まいについて「着ることや食べることと同じように、自分なりの価値観や、それを語る多種多様な言葉をもっているでしょうか」という問題提起をされましたが、お客様は、ご自身の求める住まいについての価値観を語る上で必ずしも多種多様に言語化はされていないかもしれませんが、ご自身の「価値観」はしっかりとお持ちである、と思います。設計者はそれを感じ取りながら、少しずつ言語化して、図面を介して、お客様のご納得を得て、建てるに値する建築をつくる作業に就いています。

 「衣」も「食」も「住」も、自分に合うものを受け入れるという共通点があると思います。それらを通して「少し良い思いをしたい」という共通点もあるでしょうか。

 建築に就く者も責任ある仕事をしているのだと改めて思います。

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