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2023/09/02

  • コラム

建設業のデジタル化、多難?

 コンピュータ化、「IT」、デジタル化、「DX」と、コンピュータやインターネットを利用して業務の改善や効率化を目指すためのキーワードもこの2、30年で様々に変化してきています。しかも、我々一般人からすると、いずれもこれらの言葉が突然登場し、それが常識になっていくかのようなプロセスに戸惑いを感じながら、なんとか時代に追いついていかなければ、とあたふたする日々です。

 時の首相が「IT」を「イット」と呼んで周囲から笑われているニュース映像がありましたが、普通、初めて「IT」を見たら、学校英語で習った通り「イット」と読むやろ、と同情してました。「DX」も「デラックス」ではなくて「デジタル・トランスフォーメーション」と読まなければ時代に取り残されているように思われるようです。難解です。

 コンピュータ化であれ「DX」であれ、日頃めんどくさいなと感じていることが改善されて無駄がなくなるのなら大いに歓迎したいところです。それでも、建設業ではなかなか前途多難ではないかと思います。

 建築現場の担当者が何をしているかと言いますと、着工時には各監督官庁に行政上の届を提出しなければなりません。その数が結構多く、提出のために役所の窓口に出向かなければなりません。最近は行政でもオンラインでの申請が出来るようになって(例えば道路使用許可)、出向くことも少しずつ減ってきています。現場監督は「移動時間」が多いので、移動時間が減っていくとその分を他の業務に回すこともできます。それでも現場近隣の方々への挨拶をすることも多く、こればっかりはオンラインではできず、対面でさせていただくことになります。

 現場の安全管理や工程管理、品質管理に関係する書類も多いです。安全管理方針を策定して掲示して、仮設計画を立てて、仮囲いを設置して、工事看板を設置して、等々すべてを一人でするわけではないですが、漏れなくできているかの確認をしなくてはなりません。最近は電話だけでなく、写真も送ってもらうことで確認をすることもできますが。

 工事が始まっても、定例の打ち合わせを行ったり、設計図や仕様書を確認したり、「KY活動」をやったり、安全日誌をつけたり、職人さんたちの入場管理をしたり、工事写真を撮って整理したり、と目まぐるしい作業をこなしていきます。現場で使うお金の管理もしなければなりません。

 このような作業を「コンピュータ化」以前はすべて「紙と鉛筆」と口頭でのやり取りで処理していました。最近は少しずつパソコンやスマホを使って効率的に事務処理をしていくようになっていますが、元々やるべきことが多いので、すぐにパソコンやスマホだけで処理できるものではありません。しかも長年アナログ的にやっていた習慣もあって、ついつい従来のやり方の方が早くできる、新しいやり方は覚えるのも億劫、現場管理に忙しくそんな時間もない、などと「やらない理由」が出てきます。

 そんなことも言ってられない、時代は「DX」、新しいことも取り入れなければならない、と掛け声をかけてトップダウンであれボトムアップであれ、新しい仕組みを導入したとしても、失敗する確率は50%以上ではないでしょうか。実務の実態をきちんと見ずに新しいシステムを導入しても実態に合わず効果もないでしょう。だからと言って何もしないわけにもいかず、あれこれ試行錯誤しながら時代に伴走しようとしています。前途多難です。

 

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